2021.12.2915:00
バンドマンは、こうでないと。
2021年12月12日、東京・両国。個人的にサポートライブ納めの日。天気は晴れ、少し寒い。
「青木まりこ現象」とかいうヘンな名前のバンドのサポート。もちろん曲もメンバーもヘンだ。
だけどなんだろう、このセンスと中毒性。聴けば聴くほどクセになるし気付けば歌ってしまっている自分がいる。そして一緒にいるだけでめっちゃ笑える奴ら。人が気持ちいい。どんだけ楽器が上手でも最終的に残るのは人間性。痛いほど知っている。
今年3本しかライブをしていないという事実に震えながら箱入りし、現場リハーサルを終える。
隙間あらばメンバーで酒を呑み交わす。
あぁ、これがバンドだな。としみじみ。バンドマンなんてそんなもん。ステージでしか輝けなくていい。むしろそれがいい。酒を飲んでいようがいまいがカッコよければそれでいいのだ。誰がなんと言おうとね。
迎えた本番。酒を飲みながらライブはほとんどしない闥也が、まぁまぁ酔っ払った状態で演奏した。酒が進むメンバーなのよ。俺以外はもっと飲んでたけど(笑)
気づかないレベルの個人的なミスはしたけど、本当に楽しかった。
予定調和なし、シーケンスやクリックなどもなし。バンドメンバーからの唯一のオーダーは「たっちゃんらしく自由に叩いてほしい」とのこと。即興で曲を途中で止めたり、リハーサルに無いことも沢山盛り込んだ。これが文字通りライブだ。
このバンドの核となるベースの浅倉。こいつは俺が上京して初めて演ったライブの仕事現場で知り合い、意気投合。
後に「すんげー奴がいるな・・・」とお互い思っていたことも話した。
ベースプレイと人間性に心底惚れ込んだ数少ない友人。
お互いクソ忙しいこともあり、彼とは1年に1回くらいのペースで飲んでいた。その度に「何かやりたいね」と話していた。
年々ミュージシャンとして成功を収めていく彼をずっと見守っていた。
アニソンフェスの横浜アリーナ公演や著名声優のバック、果てはMステへの出演や誰もが知るアーティストLiSAやEXILEのMV・ライブサポートまで務めている。
いや〜・・・凄すぎて遠い存在になってしまったなぁ・・・おめでたいなぁ・・・
と思っていた矢先、連絡が入る。
"俺の持ってるバンドで一緒に演ってほしい"
という一報だった。
とても嬉しかったし、即答でYesと伝えた。
そして音合わせのリハーサルに入り、他メンバーも気に入ってくれて親睦会として朝まで飲みに行った。というか1時間だけ飲む予定が、盛り上がり過ぎてスマホも時間すらも見ていなかったのだ。そんなことはなかなかない。歳を取ると明日のことを考えて生きてしまうから。気付けば深夜1時を回っていた。
Re:plyの活動もずっと見ててくれたようで、色んな話をした。
色んな話の中でも特に印象に残っているのが、浅倉の言葉。
「色々とビッグネームをやっても、結局は不完全燃焼。ワガママだけどやっぱり自分がスポットライトを浴びたい。バンドがやりたいねん!」
と。なるほど。そうだよね。ビッグネームアーティストサポートしてる人はみんな似たような事を口にする。その理由は分かる。
つまり"音楽だけで"生計を立ててはいるが、それがゴールではないということ。
アーティストサポートというのはあくまで自分は黒子役。自分を出してはいけない仕事。個をなるべく潰さないといけない。そりゃあ、葛藤するわな。
もちろんその道がしっくり来てる人も沢山いる訳ですから"人による"お話しではある。どちらも正解だと思う。間違った道などない。
君が黒子で終わって良いわけがない!そう声を大にして彼に言うと、この上ない純粋な瞳で深くうなずいていた。
もともとこのバンドは各所で活躍中のミュージシャンが羽根を伸ばす為にやっていたバンドだった模様。
闥也でいうところの「依然、君が欲しいまま」のような存在だ。
フワッと活動するなかで"ちゃんとやったら売れるのに"などの声や、レコード会社の人たちにも注目されてきたこともあり本格的にやりはじめたそうだ。
話をライブの日に戻そう。
ライブが終わり、青木まりこ現象のファンの方に称賛の声をいただいた。差し入れまでも。ありがたい。
正直、オリジナルメンバーではないので少しのプレッシャーはあった。(9割は自信しかないけど)
「ドラムが変わると同じ曲でも全然変わりますねー!!」
至極当然の事だが、そんな言葉さえも嬉しかった。酔っ払っているせいではない。
ちなみに酒に酔っても感受性はあまり変わらない。いつでもビンビンである。
客はけ後にライブハウス内で軽い打ち上げがあったのだが、そこでも初顔合わせの対バンしたバンドマンに
「曲はふざけているのに演奏がしっかりしているからめちゃくちゃ聴き入ってしまいます!」と絶賛された。
"ゴマをすって体裁上仲良くしたいだけの中身がねぇ奴"は腐るほど話してきてるので、そういうのは会話して3秒で見抜けるスキルがある。だが、この日はそんなしょうもねぇやつは1人も居なかった。みんな純粋に正直な感想を口にしているなと。シンプルに嬉しかった。
打ち上げも終盤、ライブハウスの店長さんのありがたいお話のコーナーがやってきた。
それは何かと言うと、1バンドずつ事務所に呼ばれ店長さんから今日のライブについて・今後の展開について、ご説教やアドバイスを沢山貰うのだ。
若い頃から四六時中全国ツアーを回っていたので、この時間は数えきれないほど立ち会って来た。
(あくまで自分の)経験上、お門違いも甚だしいのだがプロデューサーでもないのに勝手なことばかり尺長めでお口を開く"見当違い勘違い店長さん"が多いのだが、今回は違った。
酒を飲みすぎて怒られるんじゃないかとメンバー一同ヒヤヒヤして事務所に向かったが、その逆だった。
店長:君たちめっちゃ良いわ!!もうそのままフェスまで出て欲しい!!ウチらも協力するわ!!世の中のバンドマンに「これがバンドマンや!」って魅せてあげたいわ!!以上!!!帰れ!!
とのことだった。あっけらかんとしたメンバー同士で顔を合わせ「このスタイルを貫いてフェスまで行きます…!!」と口に出した。なんかエモかった…
良い箱だなと確信した。
メンバーとフロアと対バンと店長さんに認められた気がして、感情が昂りながらライブハウスを出た。
帰る方向違いの浅倉とミッチー(Vo.Gt)が両国駅まで送ってくれている道中、昂る感情を更に爆発させるようなこんな会話が。
(前提として俺は浅倉以外のメンバーは初対面)
浅倉「今日めっちゃ良かったわ…やっぱり俺の目は間違ってなかった。たっちゃんのドラムは最高やわ。」
ミッチー「本当に最高でした!あっくん、ほんと良いドラマーさん連れてきてくれましたね…!」
浅倉「当たり前やん!!俺、自信あったもん!!絶対にたっちゃんやったらメンバーにもお客さんにも最高!って言わせれるって自信があったんよ!!」
と、子供のような顔で叫んでいた。
挙げ句の果てには"サポートではなく本メンバーになってほしい"と口説かれた。浅倉とは付き合い8年だが、いつもの冗談の雰囲気では無く本気で言っているなと分かった。
もちろん今すぐにとは言わないし、趣味バンドから本格的なバンドでいこうと決めたのは最近のはなし。
これから俺たちが力を付けて、メンバーになりたい!と思わせるよ!!と言ってくれた。アツいなぁ。なんて暑苦しいんだ…
最高やんけ。
2人とも飲み過ぎて泥酔状態に近いものがあり、舌がうまく回っていなかったがむしろそれがリアルさを物語っていた。
少しだけ涙が出た。そんなに自信が沸くほどのドラマーだと思ってくれていたこと、即メンバーにしたいほどのやつだと見込んでくれたことが嬉しくて嬉しくて。
エレベーターで顔が見えなくなるまで手を振って見送ってくれたあと、ホームに向かう途中1人でこっそり嬉し泣きをした。なんてピュアな奴らなんだよ…かわいいなぁ。
その夜は何かと感慨にふけった。あぁ、まだ自分を"心から"求めてくれる人がいるんだ。嬉しいなぁ。生きてて良かったなぁ。とか。闥也あるある。
汚れてしまった心が洗われ、子供に戻り、自分の価値を再確認できた良い1日でした。
バンドマンは、こうでないと。